Food Education

食育

食べものが体と
心をつくります

私たちの保育理念「生きる力を育てる」の礎になるのは、食べものです。
日々の食べものが、体や心を育んでいくと考えています。

思いっきり遊べるのは、健全な体と心があるからこそ。
そのため、私たちはとことん食育に取り組んでいます。
その一端をご紹介しましょう。

Interview

インタビュー

  • 栄養管理チーム長(管理栄養士)

    長嶋貴代

  • アドバイザー(管理栄養士)

    矢部まり子

食育理念に沿った献立作成からコスト管理、採用から人事管理にいたるまで「すくすくどろんこの会」の食育を統括している管理栄養士の矢部まり子さんと、同じく管理栄養士の長嶋貴代さんに、食育についてお話をお聞きしました。

子どもたちにとって理想の食とはなにか

Q

矢部さんはオーソモレキュラーの資格を持っているとのことですが、オーソモレキュラーとは、どのような栄養学ですか。

矢部
私たち人間の体は37兆個の細胞でできていますが、その細胞一つひとつは毎日の食べものからできていて、適切な栄養を摂取することによって健康なココロやカラダができるという考え方に基づいた栄養医学です。近年、子どもたちの発達障害やうつ病、アトピーなど増えていますが、その原因の多くは食べものが起因していることもわかっています。
Q

この場合の「適切な栄養を摂取する」とはどのようなものですか。

矢部
血液検査をして専門知識を持った医師に解析してもらうと、どの栄養素が足りないのか、どの栄養素が過剰なのかがわかります。タンパク質、鉄分、亜鉛、ビタミンB群は特に不足している栄養素で逆に糖質の過剰摂取が多く見られます。 園児たちに血液検査をすることはありませんが、私が普段からかかわっている医療現場での実態と照らし合わせて現代人における食事の傾向から、おおむねどのような栄養素に過不足があるかがわかりますのでそこを補充できる給食の提供を行っています。
Q

それはどのようなものですか。

矢部
まず第一に、魚や肉、大豆製品など高タンパク食品を食べるということです。また、化学調味料はなるべく使わないようにもしています。塩は自然塩、みりんは本みりんです。素材の味そのものを引き出す調理をしているため、砂糖はあまり使いませんが、それでも精白した砂糖ではなく三温糖を使っています。油にもこだわっていて大量調理の場ではなかなか難しいのですが、マーガリンは使わずにバターを使い、揚げ油は、1回だけの使い切りにしています。口から摂り入れた油は細胞膜にダイレクトに影響を及ぼしますから、油の質や使う種類を変えるだけで、アトピーやぜんそくなどの症状緩和に期待できます。ドレッシングもすべて手作りです。

左:レバー唐揚げ 右:魚料理

Q

それだけこだわりを持って実践しているとなると、当然コストがかかると思いますが。

矢部
そうですね。一人あたりの食材費は、一般的な保育園の1.5倍くらいかかっていると思います。私は他の保育園で働いたことがありますが、食材のコスト上限は園の食への考え方によってまったくと言っていいほどちがいますね。私が当法人に入職する際の面接で、コスト管理から栄養士や調理スタッフの募集まですべて任せていただくと綿貫理事長から承諾をもらっていますので、思う存分やらせていただいています(笑)。理事長は、「子どもは一生懸命遊ぶことが大切」というお考えですし、遊ぶためには元気な身体が必要です。その身体を作るのが毎日の食事と考えると、保育園での昼食と補食で子どもたちに何をたべてもらうか?はとても大事でおろそかにはできません。 コストに関しても頭の片隅におきつつまずは大事な栄養素の摂取を優先させてもらっています。お魚料理には大豆食品を組み合わせるなどして、タンパク質の摂取量を上げるなどの工夫をしています。
Q

ドレッシングなどもすべて手作りとおっしゃいましたが、調理現場の手間もかかるでしょうね。

長嶋
そうですね。手間を惜しんでは良い給食を提供することはできません。反面、使える時間は限られています。そこで、手をかけるべきところと、機械の力を借りて手間を省くところのバランスをとるようにしました。そのため、各調理場にフードプロセッサーやコンベクションを導入していただき、それらをフル活用しています。調理現場の環境整備についても現在の保育園では先端をいっていると自負しています。
Q

子どもたちにとっての人気メニューといえばカレーやハンバーグなどが思い浮かびますが、子どもたちの嗜好に合わせるだけでは栄養のバランスを取るのは難しいと思います。食べてもらうためにどのような工夫をしていますか。

矢部
好き嫌いを克服することも大切ですが、まずは何よりも食べてもらわないことには栄養を摂取できませんから、子どもが好きなものを献立に取り入れたうえで、さまざまな工夫をしています。例えば、鉄分をしっかり取れるよう、ハンバーグにレバーを加える。そうすることで、子どもたちは知らないうちに必要な栄養を摂取でき、味覚も少しずつ発達していきます。
Q

食育を進めるうえで、どうしても保護者の理解も必要だと思いますが、すくすくどろんこの会の食育の取り組みについて、保護者の反応はいかがですか。

矢部
私たちの園では夏場以外、その日の献立のサンプルを保育園の玄関に展示しているのですが、それをご覧になって興味をもってくださる方が増えましたね。「レシピを教えてください」とか「家でも作ってみました」というお声をたくさんいただくようになりました。なにより、家庭のなかで子どもたちと食べものについて話をする機会が多くなったと思います。また、SNS発信にも力を入れています。
Q

保護者の意識が変わることで子どもたちにも良い影響がありそうですね。

長嶋
私たちの園では、“卒園児にひとりでご飯を炊けるようにする”を目標に掲げていますが、子どもは親が喜んでくれている! 自分が役に立てたんだ! と感じれるのはとてもうれしいと感じます。ふだんから人参やたまねぎの皮むきなど簡単な食に関する作業を行うことで、特別ではなく当たり前に調理を体験してもらうことが重要と考えています。あまりハードルを上げないよう意識して食育計画をたてています。食事は日常のことで特別なことではありませんから、継続してできることが大切なんです。

(インタビュアー/髙久美優)